6月、7月と武蔵野美術大学映像学科2年生、クリストフ・シャルルさんが受け持つ選択授業で週一で講師をしました。あまりうまくやれた気がしないのですが、この前期、初回にどういう感じでやったのか、備忘録としてこの記事をのこしておきます
初めてのことであわあわしましたが、「メディアアート演習」なる授業で、内容はメディアと身体について、とのことで、ひとまず映像学科の2年生が初めて(身体表現を踏まえた)メディアアート的なアプローチと、プログラムなりデバイスなりに触れる機会(MaxやArudino)とのことでした。
最終的に学生自身が授業で教わった技術をつかって、なんらかの身体表現をする、という実技科目なのですが、かなり時間のない中で、ある程度の水準のものを作る力があるところは、さすが美大生だなー、と思いました。
シャルル教授の下、非常勤講師が私を入れて4人(ゲストで1人)いて、1週間のなかで、この仕事をいきなり私に振ってきた小柳さんはMaxと映像、ダンサーのJOUさんは身体表現、この期間、全く会わなかった橋本さんは映像、私の前任だった谷口暁彦さんはゲストとして2回メディアアートについて話すという割り振りのなかで、私は電子工作と音について担当し、私は毎週1回3時間全8回(制作発表含む)の中でやりくりしながら触れていきました。
学生のためにアーカイブしてある講義録は以下です。様子を見ながらつけたしたり減らしたり、授業に間に合えばいいや、とネット上の資料をそのままリダイレクトリンクというものもあるので、内容はもっと整理したいと思っています。
メディア・アート演習A 金曜
対象となる学生は2年生で、まだ10代ということもあるし、専門もまだ未分化なので、私が美大の油絵科からIAMASに行って、戸惑ったことや、ここから始めたらすんなりいくかな(たとえばテスターで電流をはかるとか)というところから始めるようにしました。実際はかなり行きつ戻りつしましたが、ピエゾ素子でマイクをつくり、フィードバックを実験し、モーターを動かし、というところから始めて、ひとまずArudinoで直流から交流まで操作する方法までやってみるという感じで進めていきました。テスターの使い方から初めたのはあとあとよかったです(トラブル対策が自分でできる)。
レクチャーは、サウンドアートや、音のでるなにかを作る方法や手段について触れるのはもちろんですが、どうしてこんなわけわからないやり方で音を出しているのか、作家は何を考えて、またどんな先行例や歴史を踏まえてこんな方法で音をだしているのかを押さえることを念頭において、作例を並べていきました。制作もそうですが、できるだけ鑑賞の手助けになってほしい、こういったものの見方がわかれば、このジャンルのお客さんも増えるのでは…、という思いもあり、found objectからフィードバックを使った作品、ノンイデオマティックインプロヴィゼーション、アルゴリズム作曲、テキストスコアまで駆け足で紹介していきました。
次は9月で、期間はもっと短い予定です。けっこう手間がかかってつかれる仕事なのですが、教える中で自分がずっと作ってた回路が間違ってる事に気づいたり、学生のリアルな反応や、彼らが感じている「身体表現に対する漠然とした違和感」について考えるうちに、身体表現の流れが90年代後半でがらっと変わってたりすることに気づいたりしたので(講義は5回で終わらせて、残りは制作に当てる予定だったのをあわてて6回目の講義をつけたしました)、自分のためにも勉強になるなと思ったりしています。次はもうちょっとうまくやりたい予定。
私が武蔵美の学生だったときに映像学科が新設されて、その関連で現代音楽やメディア関連の講義も増えて、単位がたりてるのに受講した思い出があります。粉川哲夫、吉村弘、上野俊哉なんかの授業をうけた覚えがありますが、ひとり、中世音楽から現代音楽までのレクチャーをしていた女性の先生がいて、その講義の内容に影響された記憶があるのですが、あれは誰だったのかな…、90年代始めの話です。
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後記:現代音楽のレクチャーをしていた先生は、白石美雪さんだったということが判明。映像学科の授業ではなく、学芸員の授業でとった講義だったらしい。たぶん私が受けてたころは教授ではなく講師だったと思う…、先日、コ本やで10人たらずしかいない座談会聞いてたのにまったく思い出せなかった…。
通年で中世音楽から現代音楽まで連綿とレクチャーしていく内容で、かなり勉強になった思い出があります。たぶん講義内容ここにまとまってる気がする。
増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで